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2.嗅覚の不思議 (4)嗅覚障害 [健康]





1.嗅覚のメカニズム (3)嗅覚の男女差




視覚や聴覚に比べて嗅覚の加齢変化はあまり知られていませんが、超高齢社
会が進む中で、嗅覚の重要性が注目されています。実は65歳以上の約半数、80
歳以上では約4分の3の人に嗅覚以上が生じているといわれています。高齢者
の中には、本人が気付いていないことも少なくありません。これは、脳の記憶
が減退した嗅覚を補っているためで、この脳の記憶の機能が衰えると、におわ
ないことをはっきりと自覚するようになるのです。

 加齢による嗅覚の変化の原因には、鼻にある嗅覚のセンサーである嗅細胞の
現象が挙げられます。



 認知症の代表的な症状である記憶障害は、記憶を司る「海馬」が萎縮するこ
とにより起こりますが、日本人の認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知
症では、嗅神経と海馬の経路に障害が起きます。そのため、記憶よりも先に嗅
覚の低下が賞状として現れるのです。認知機能低下と嗅覚の関係は顕著であり、
明らかにアルツハイマー病の患者と健康な高齢者の嗅覚を比較したテストでは、
明らかにアルツハイマー病患者の成績の低下がみられたという研究結果もあり
ます。


 また、食べ物の味覚には嗅覚が大きく影響しているため、嗅覚が弱くなると
味の区別もつかなくなり、嗅覚の弱い高齢者ほど痩せ気味、病気がちになりま
す。これは、嗅覚が衰えることで食欲がなくなり、栄養状態が悪くなりやすい
ことを意味しています。実際、味覚障害より嗅覚障害の人が約3倍も多いこと
からも、嗅覚障害が食欲・栄養摂取に大きく影響を与えることが分かります。

 嗅覚は食事や香料などのよいにおいを楽しむだけでなく、火事やガス漏れを
いち早く感じたり、腐った食べ物を嗅ぎ分けたりと、身の安全を守るためにも
大変重要な感覚です。高齢者の一人暮らしも増えていますので、危険を察知す
る嗅覚はますます大切になっています。さらに嗅覚は、喜怒哀楽などの感情と
もつながると考えられています。


<嗅覚が衰えるとこんな影響が・・・>
・虚弱体質になる
・筋肉量が減る
・覇気がない
・ひきこもりがちになる
・一日の時間間隔にめりはりを感じない



 嗅覚障害の治療法は残念ながらありませんが、においの刺激によって脳のに
おい感度をトレーニングできる可能性はあります。嗅覚が衰えないようにする
ために、においを嗅いで、何のにおいか常に意識するようにしましょう。なお、
嗅覚障害には、次のような分離があります。


嗅覚脱出   においがまったくわからない
嗅覚減退   においを嗅ぐ力が弱くなる。においは分かるが、何のにおいかわからない
嗅覚過敏   においに異常に敏感になる
嗅覚錯誤   どんなにおいも悪臭として不快に感じる
異嗅症    においがしないのに、においを感じる。必ずしも不快な悪臭ではない

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1.嗅覚のメカニズム (3)嗅覚の男女差 [健康]





2.嗅覚の不思議 (2)嗅覚の個人差



 においの感度には、性差があります。それは、においを感じる大脳辺緑系(海
馬や偏桃体)の領域の神経回路に性差があるからです。例えば、汗のにおいを
男性と女性が嗅いだ場合、脳で活性化される部位に違いがみられます。女性に
はいい匂いでも、男性にとっては嫌な臭い、またその反対の場合もあります。

 そして、大抵の場合は、女性の方が男性より感度がいいといわれています。
それは、女性の方が、男性より糸球体の反応が速く、1つのにおい物質でより多
くの糸球体が反応するからです。これは、女性の方が脳でにおいを判断すると
きにコントラスト(信号の強弱)をつけやすい、すなわちにおいに対する感受
性が豊かだということを示唆しています。

 しかし、男性はにおいの感じ方が安定しているのに対し、女性は性周期とと
もに感じ方が変化します。調香師に男性が多いことはにおいの感度の差とは逆
転していますが、感じ方の安定という特性は強みになります。女性の調香師の
中には「月経期間中は調香しないようにしている」という方がいるようです。

女性は感受性が豊かであるがゆえに、ホルモンの影響も受けやすい繊細さを持
っているといえます。



 
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2.嗅覚の不思議 (2)嗅覚の個人差 [健康]





2.嗅覚の不思議 (1)嗅覚の順応


 においには、「快・不快」や「よい香りと悪臭」などの区別があります。しか
し、よいか悪いかの判断基準は個人個人によって違います。なぜ人によってに
おいに対する感覚が異なるのでしょうか。一つは、育ちや経験、学習が大きく
影響します。においの電気信号が、海馬や偏桃体にダイレクトに伝わることで
記憶と協力にリンクしているからです。

 もう一つは先天的に備わった能力です。例えば、産まれて間もない赤ちゃん
は、自分のお母さんの母乳のにおいを好み、自ら口を開けて吸うことができま
す。これは学習による行動ではなく、生まれながらに備わっている行動といえ
ます。これらのことから、後天的に形成される好みだけでなく、先天的に遺伝
子がにおいの子のみを決定しているともいえます。

 また、同じ人でも体調によって感じ方は異なり、生理状態やホルモン量の変
化が嗅覚に影響します。そして、近年では、人間で約400種類ある嗅覚受容体
の遺伝子の塩基配列は個人差が大きく、その差がにおいに対する感受性や好み
に影響しているともいわれています。

 におい物質の多くは、複数の受容体を活性化させるため、もし一部の受容体
が機能していなくても、ほかの受容体によってにおいを感じることができます。
 
よって、たくさんの受容体が機能している人の方が、似たにおいを嗅ぎ分ける
識別能力が高いといえます。


2.嗅覚の不思議 (1)嗅覚の順応





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2.嗅覚の不思議 (1)嗅覚の順応





 においを認識する嗅覚の基本的なメカニズムが分かったところで、次は嗅覚
のさまざまな特徴についてみていきましょう。



1.嗅覚のメカニズム コラム:鼻以外にもある嗅覚受容体







(1)嗅覚の順応


 どこからともなくおいしそうなカレーのにおいを感じてお店に入ってみても、
そのにおいをいつの間にかあまり感じなくなっているという経験はありません
か。私たちは、同じにおいを嗅ぎ続けていると、嗅覚の感度が低くなる「嗅覚
疲労」が起き、においの感じ方が弱くなってしまいます。これは、嗅覚がほか
の感覚に比べて疲れやすいという特徴を持っているからです。しかし、嗅覚疲
労は同じにおいだけに起き、疲れていても別のにおいは嗅ぎ分けられます。同
じにおいを嗅ぎ続けていると、脳へ伝えるための電気信号が生じにくくなり、
さらに、そのにおいの信号を送らなくなっていくのです。この現象を「脱感作」
といいます。脱感作があることでその場のにおいに鈍感になりますが、新たに
生じたにおいには気付きやすくなり、周囲の変化を敏感に嗅ぎ取ることができ
るのです。
 香水販売店には、幾種類ものにおいを試していただくために、コーヒーの豆
が置いてあります。嗅ぎ続けて脱感作した香水のにおいを、コーヒー豆のにお
いを嗅ぐことで、再び嗅ぎ取ることができるようになります。
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