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4.驚くべき「再生力」 [健康]

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 私たちの体は、損傷すると、損傷したところを自ら修復させようとします。
いわゆる、再生力といわれるものです。この損傷した組織の修復は、どのよう
にして行われるのでしょうか。


(1)再生力と幹細胞



 トカゲはシッポを切られても、切り口から再びシッポを生やすことができま
す。イモリは足を切られたとしても、足を丸ごと再生することができます。し
かし、人間は簡単に再生することはできません。それは、人間の体の機能が高
度に複雑化し、高い知能とはん用性の高い運動能力を獲得する方向に進化を遂げ
たからです。その結果、万が一に備える自然治癒力はあるものの、臓器の再生
を一からやり直して、元の状態に戻す機能は衰えてしまいました。
 一般的に生命体は、高度に進化してくことで、再生力がどんどん低くなっ
ていくといわれていますが、完全に再生力がないわけではありません。けがを
しても、しばらくすると傷が治っているのは人間に再生力があるからなのです。
この再生力は、生理的再生と病理的再生の2つに区別されます。生理的再生は、
皮膚や毛、爪など全身の多くの細胞が一定の割合で生まれ変わるものをいい、
病理的再生は、けがや病気で失われた組織の修復を行なうものを云います。
 再生力とは、細胞の集合体としての完成度をどれだけ維持し、再生できるか
の能力を指します。すべての生き物の体は細胞でできており、心臓や脳、皮膚
などすべてが細胞の集合体です。そして、それぞれの細胞は役割をもって働い
ており、その中に「細胞を生む」ことが担当の細胞があります。これを「幹細
胞」といいます。
 幹細胞は、傷ついたり古くなってしまった細胞を入れ替えるため、新しい細
胞をつくったり、けがや病気で失われた細胞を新しく再生する働きをしていま
す。臓器が損傷し、修復が必要となった場合、損傷部位の近くにある幹細胞が、
自分を複製して幹細胞の枯渇を防ぎつつ、どの臓器のどの細胞がどの程度損傷
下のかを確認して新たな細胞に変身します。そしてこの幹細胞は、どのよう
な臓器に変身できるのかなどの脳力の多様性によって分類が分かれています。




<組織幹細胞による再生力>
 私たちの体の中に存在する幹細胞を組織的幹細胞といいます。造血系の組織や
皮膚をはじめとする上皮系の組織は、細胞が日々生まれ変わっているので、組
織の維持やけがなどの不測の事態に備えた再生力と呼び能力をもっています。
 例えば、骨髄には造血幹細胞があり、赤血球や白血球などの血液細胞をつく
っています。血液を多少採取されても、元のレベルに戻るのは、造血幹細胞の
働きによるものです。内臓では、特に高い再生力をもっている肝臓は、外科的
に3分の2程度まで切除しても元の大きさに戻ります。胃や腸は、3分の1程
度切除すると元の大きさまで戻ることはありませんが、胃や腸の粘膜だけをみ
れば、非常に高い再生力をもっています。つまり、それぞれの臓器に再生力の
高い細胞は存在していますが、それぞれの組織の再生力は異なっているといえ
ます。



(2)生理的再生




 皮膚や毛、爪など、細胞の生まれ変わりが一定の割合で行われるものを生理
的再生といいます。ここでは代表的な「毛」についてみていきましょう。





<毛の再生>
 私たちの体に生えている毛の再生にも幹細胞が関与していることが知られて
います。
 私たちの毛は、毛を産生する毛包を主体に、表皮から上の部分を「毛幹」、表
皮より下の部分を「毛根」と呼びます。毛根部の一番下のふくらんだ部分は「
毛球」といい、この先端部に毛乳頭・毛母細胞があります。
 毛乳頭は、周囲に網の目のように張り巡らされている毛細血管を通じて、髪
の毛を発生させるために必要な栄養素や酸素を受け取ります。その栄養素が毛
母細胞にきわたることで細胞分裂し、どんどん毛を成長させていきます。つ
まり、毛乳頭の毛母部分が毛の発生や成長を司っているため、毛母細胞がある
限り、いくら抜いても毛は次々と再生しています。この毛母細胞を生み出して
いるのが毛包幹細胞です。



●発毛司令塔「バルジ領域」
 毛根部には、発毛の司令塔といわれることもある「バルジ領域」という部分
があります。そもそもバルジ領域が発見されたのは2000~2001年と最近のこ
とです。バルジ領域には「色素幹細胞」と「毛包幹細胞」という2つの幹細胞
が存在し、毛の生成において重要な細胞をつくり出す働きをしています。毛包
幹細胞のそれぞれが細胞分裂をすることで、毛母に細胞の元を供給します。
 毛包幹細胞は、“元になる細胞”と呼ばれており、毛をつくる構造の大部分を
つくり出すといわれています。毛根を包む筒状のものである毛包の下部には毛
母細胞や毛乳頭があり、新しい毛が育つ場所であると考えられています。
 色素幹細胞とは、字のごとく色をつくる細胞であり、毛の色を供給する色素
機能があります。そして、色素幹細胞と毛包幹細胞が同時に活性化することに
より色のついた髪が繰り返し再生するといわれています。バルジ領域において
毛包幹細胞と色素幹細胞がしっかり働くことで発毛が促されるのです。



●毛の再生・サイクルのスピード
 毛には「毛周期」と呼ばれる生えかわりのサイクルがあります。毛母細胞が
分裂をはじめると、皮膚の下の方で新しい毛が再生され、毛細血管から栄養素
を取り込みながら太く伸び、表皮の上へ出てきます。この時期が成長期です。
その後、毛母細胞の分裂が止まって毛が抜ける準備をする退行期に入ると、毛
乳頭と毛の結合が緩み、毛が上へ押し上げられます。さらに、休止期に入ると、
毛と毛乳頭が完全に離れて自然に抜け落ちます。
 このように、毛は成長期・退行期・休止期を一定の周期で繰り返し、再生し
ていきます。また、毛包幹細胞が成長期・退行期・休止期において、細胞分裂
を繰り返すことで毛を再生しており、細胞分裂の活性が低下すると毛の再生・
サイクルのスピードが遅くなるなど、毛周期の異常が起こります。






コラム・白髪と抜け毛の抑制「17型コラーゲン」


 現在、幹細胞医学分野では、白髪や発毛の研究が進められています。中でも、
「17型コラーゲン」は、白髪と抜け毛を抑制することが可能であるといわれて
います。また、コラーゲンといっても、実は29種類も存在し、それぞれが違う
役割を担っており、その中で髪と大きく関係があるといわれているのが17型コ
ラーゲンです。これは、バルジ領域にある毛包幹細胞に存在し、毛包幹細胞と
隣り合う色素幹細胞の維持を助ける働きもしていると考えられ、髪の毛の成長
のサポートや抜け毛を防ぐのと同時に、髪の色を黒く保つという大切な役割を
担っています。17型コラーゲンは、年齢とともに減少してしまいます。17型コ
ラーゲンが不足することによって、毛包幹細胞と色素幹細胞との間の相互作用
による幹細胞維持機構が破綻し、白髪や脱毛が起こります。
 17型コラーゲンは、豚や鶏の軟骨などに含まれているタンパク質ですが、こ
れらを摂取しても体内で17型コラーゲンは増えないといわれています。また、
現在の段階では、17型コラーゲンを人工的につくることは難しいとされている
ため、17型コラーゲンを増やすというよりも、「減らさないようにするための治
療薬」の研究が進められていることに多くの期待が寄せられています。




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