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1.嗅覚のメカニズム コラム:鼻以外にもある嗅覚受容体 [健康]






4.触覚を使ったケア (2)タクティールケア


 においを感知する嗅覚受容体は、鼻腔の中の嗅上皮だけでなく、脳、心臓・
血管、腎臓などの臓器にも存在しています。そして近年、肺にも存在すること
が海外の研究グループより報告されました。肺で見つかった嗅覚受容体は、肺
胞などに存在する肺内神経分泌細胞にありました。この細胞は、セロトニンや
神経ペプチドなどの神経伝達物質を豊富に産生します。これらの神経伝達物質
は、肺の発達、生理機能の調整をしていますが、一方で、咳や喘息も誘発する
と考えられています。

 肺の嗅覚受容体は、異物センサーとして常時働いており、たばこの煙や排気
ガスの臭い物質を感知すると、セロトニンなどを放出し、周りの神経や筋肉を
刺激するため咳が出ます。肺の嗅覚受容体は脳へ情報を伝えるのではなく、そ
の場で速やかに大量の神経伝達物質を放出し、非常事態に対応しているのです。

つまり肺は、複数種の嗅覚受容体を発現し、さまざまな物質に幅広く速やかに
対応する優れたシステムを備え、私たちの体を守ってくれています。

 しかし、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者の肺には、嗅覚受容体が健常人
よりも多く存在することが確認されています。そのため、神経伝達物質の産生
が過剰になり、呼吸障害が起こります。よって、肺疾患の原因は、嗅覚受容体
の働きが鍵を握っている可能性があります。



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4.触覚を使ったケア (2)タクティールケア [健康]





4.触覚を使ったケア (1)触れることが育む心 




 タクティールケアは、福祉大国であるスウェーデン発祥のタッチケアです。
タクティールとは、ラテン語の「タクティリス(TaKtiis)」に由来する言葉で、
「触れる」という意味があります。手を使って相手の背中や手足を柔らかく包
み込むように触れるのが特徴です。

 このタクティールケアは、スウェーデンで1960年代に未熟児のケアを担当し
ていた看護師らによって考案されたもので、彼女達が母親に代わって、乳児の
小さな体に毎日優しく振れたところ、子どもの体温は安定し、体重の増加がみ
られるようになりました。そこで、降れることの有効性を確信し、経験に基づ
いてこの技法をつくったといいます。そして、90年代後半には各地に広まり、
認知症をはじめ、がんの緩和ケア、糖尿病、脳卒中、未熟児医療、ストレスケ
アなど多岐にわたって活用されています。

 日本には、2005年に認知症高齢syへの緩和ケアの一手法として、効果・手技
が紹介され、安心感や穏やかさをもたらす作用や睡眠の改善、痛みの緩和、ケ
アを受けた人と行った人の絆が深まる効果が期待できるということで、医療・
介護関係者の注目度は高まり、現在ではさまざまな所で導入されています。



<タクティールケアの効果>
 タクティールケアは、心地よさや安心感、痛みの軽減効果が検証されていま
す。その理由は、オキシトシンの分泌です。オキシトシンは、愛情ホルモンと
も呼ばれ、脳の下垂体で分泌されるホルモンです。タクティールケアで肌に触
れ、触覚が刺激されると、血液中にオキシトシンが分泌されます。その結果、
穏やかな気持ちを体感でき、体が温まり心地よい睡眠や深い呼吸ができるよう
になります。また、腸の蠕動運動が活発になり、便秘の改善にもつながるとさ
れています。

 そして、認知症の患者に対するタクティールケアの効果については、行動・
心理状態の改善、手や腕の筋肉がこわばる拘縮の症状が少なくなるといったこ
とが報告されています。ただし、すべての認知症の方に適用できるかというと
そうではなく、望まない方に対しては行わないというのも、タクティールケア
の大切なルールです。


 また、オキシトシンは触れられた人にだけ分泌されるものではなく、降れて
いる人にも分泌されます。タクティールケアは、降れている施術者も心地よさ
と安心を感じることができるのです。




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4.触覚を使ったケア (1)触れることが育む心 [健康]






1.嗅覚のメカニズム (5)においを認識する経緯





 人は、この世に誕生したときには授乳などを通して母親の皮膚と触れ合い、
その後もうれしいときや悲しい時には腕に抱かれ、そして、怪我をしたときに
は優しく撫でてもらうなどろいった経験をしながら成長していきます。このよ
うに、成長過程で触れるという行為は、ありとあらゆる場面で繰り広げられて
います。人に触れるための道具が手であり、そして、手を当てることから看護
が始まりました。ここでは、降れるケアが心身に与える影響についてみていき
ましょう。



(1)触れることが育む心


 人の受精卵は、受精後10週を過ぎるころには、脊髄の神経細胞が手足の先に
まで伸び、18週を過ぎると脳の体性感覚野につながり、触覚がうまれていると
考えられています。このころから、胎児は指しゃぶりを始めます。それは、セ
ルフタッチの原型ともいえる行為で、体の感覚によって自らの体を知る行為で
す。

 さらに、生後2ヵ月を過ぎるころから、体のさまざまな部位を触って探索す
るようになります。仰向けになって足を触ったり、足を口に入れたりすること
もあります。特定の指を舐めることで、それまで1つの塊として感じていた指
の感覚が分離し、それを思いのままに動かせるようになることを促進します。

 そのようにして、何かに触れるとさまざまな感覚が生まれます。それらは、
単純な生理的レベルで感じられるものから、複雑な心理的影響を受けるものま
で多彩です。特に、心理的な影響が大きい「痛み」「くすぐったさ」「気持ちよ
さ」の3つは、心を育むために極めて大切な感覚だといえます。

 これらの皮膚感覚は、ある程度は生まれつき備わっていて、感情と直結して
本能的な行動を生み出します。例えば、痛みは、危険を察知し他人の痛みに共
感するために必要な感覚です。また、くすぐったさや他人に触れる気持ちよさ
は、幼少期の親子のスキンシップなどで形成されます。幼少期のみならず、将
来の対人関係や、心の健康にも影響を与えていることが研究で分かってきまし
た。
 また、健常群と心療内科の外来患者(抑うつや不安の高い患者)群とで、子
どものころに親からどの程度のスキンシップをされていたかを比較した調査で
は、心療内科の患者は健常者よりもスキンシップが少なかったということが分
かっています。このように、子どものころに両親とどれだけスキンシップした
かは、意識していなくても、将来に渡ってその人の心に影響を及ぼし続けると
いえます。



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1.嗅覚のメカニズム (5)においを認識する経緯 [健康]






1.嗅覚のメカニズム (4)においを嗅ぎ分けるカギは「受容体の組み合わせ」




 前述したように、におい分子と受容体のくぼみの形の組み合わせによって識
別されたにおいの情報は、嗅細胞の内部で電気信号に変換されます。

 電気信号は、嗅神経を通じて、嗅上皮のすぐ上にある嗅球という組織に送ら
れます。嗅細胞からの電気信号は、受容体の種類ごとに糸球体でまとめられ、
どの受容体がにおい分子をどれくらい強く認識したかという情報が脳の嗅覚野
に送られます。そして、何のにおいなのかが識別されます。



1.受容体がにおい分子を認識
 嗅上皮の粘膜中に入り込んだにおい分子が、球絨毛の受容体にくっつき、
 形がぴったりあい結合すると、その情報が嗅細胞に伝わる。


2.電気信号が生じる
 受容体ににおい分子が結合した情報は、嗅細胞内で電気信号に変換され、
 電気信号が嗅神経を介して嗅球に伝わる。


3.におい分子を認識したかどうかを受容体ごとに情報整理
 嗅細胞からの情報が、嗅球の中の糸球体で受容体の種類ごとにまとめられ
 る。同じ受容体が多くのにおい分子を検出するほど信号が強くなる。


4.各受容体の活性化の情報が脳に送られる
 今、どの受容体がどれくらい活性化しているかの情報が脳に送られ、この
 受容体の組み合わせにより、何のにおいかが認識される。


 
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1.嗅覚のメカニズム (4)においを嗅ぎ分けるカギは「受容体の組み合わせ」










 嗅上皮の粘膜中に溶け込んだにおい物質は、嗅細胞から伸びた嗅線毛にある
タンパク質でできた受容体と結合し、その組み合わせによりにおいの情報が集
められます。


 人間が識別できるにおい物質は、数万種類を超えると考えられています。数
万ものにおい物質を受容体が識別するしくみについてみていきましょう。
 受容体にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる形のくぼみを持っていま
す。このくぼみににおい物質がぴったり結合すると、嗅細胞はその情報を脳に
送り、数万種のにおい物質を識別できるようになっています。それならば、そ
れぞれのにおい物質に対応する数万種の受容体が必要になるように思えますが、
人間の嗅覚受容体は約400種類しかありません。そのたった400種類ほどの受
容体で、どのように数万ものにおいを識別しているのでしょうか。
 実は、におい物質の多くは、その分子のさまざまな部分で、複数の受容体と
結合しています。そして、一つのにおい物質についての断片的な情報を脳の「嗅
覚野」に伝えているのです。受容体自体は400種類しかなくても、受容体の組
み合わせは無数にあるため、人間はにおい物質を識別している受容体の組み合
わせによって、数万種類ものにおい物資を識別しているのです。このように、
においの嗅ぎ分けは、高性能センサーである受容体からの情報を巧みに処理す
ることによって実現しています。




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1.嗅覚のメカニズム (3)においを伝える二つの道 [健康]






1.嗅覚のメカニズム (1)嗅覚を司る鼻の構造




 においの伝わり方には二通りあります。一つは、前述したように鼻からの呼
吸を介して、空気中のにおい物質を感知するルートです。
 もう一つは、食べ物や飲み物を摂取するときに、それに付随して喉の奥から
鼻に抜け、嗅上皮に達したにおい物質を感知するルートです。


 私たちは、味覚だけで食べ物のおいしさを感じていると思っている人が多い
と思いますが、実は「おいしさ」を決定づけているのはにおいだともいえます。
鼻が詰まっていると、におい物質が嗅上皮まで届かなくなり、においが認識で
きないため、おいしい料理も無機質なものに感じてしまいます。それは、人間
の持つ特殊な喉の構造が関係しています。

 人間の喉は、鼻から肺への気道と、口から食道への道が喉で交差しており、
言語の獲得とともにほかの霊長類よりも声帯の位置が下がっています。そのた
め、食べ物を飲み込むと同時に息を吸えないという特徴を持ちます。喉から鼻
に抜ける香りで感じる食べ物のおししさは、人間が嗅覚から受けている一番の
恩恵だといえます。


二つのルートを通って入ってきたにおいは、鼻腔の天井部分の嗅上皮に感知
され、嗅上皮にある嗅細胞がにおいの情報を電気信号に変えます。そして、気
信号は嗅神経を通って脳へ伝わっていきます。



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