SSブログ

3.中から高める「免疫力」 [健康]

 人間の体には、細菌やウイルスなど病原体による病気を抑え込む力があります。
これが免疫力であり、人間が生まれながらにしてもっている体を守る力です。



(1)免疫機能を司る白血球



 体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から体を守る免疫システムを担っ
ているのが「白血球」です。白血球は、骨の中で生まれます。骨の中には、骨
髄というスポンジ状の組織があり、多能性幹細胞(造血幹細胞)という特殊な
細胞がつまっています。この多能性幹細胞からさまざまな細胞が分化して誕生
しています。
 多能性幹細胞から生まれる白血球は、顆粒球・リンパ球・単球に分けられ、
顆粒球はさらに好中球、好塩基球、好酸球に、リンパ球はT細胞、B細胞、NK
細胞に分けられます。




(2)2つの免疫システム



 免疫機能は、用途の違いによって「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類に
分けられます。
 体内に侵入した異物を直ちに排除する「自然免疫」と、侵入した異物の情報
をリンパ球が認識し、その情報に基づいて特定の異物を排除する「獲得免疫」
が存在します。それぞれの免疫システムには次のような働きや特徴があります。




<自然免疫>
 自然免疫は、生まれつき体内に備わっている免疫のしくみで、生体防御の最
前線に位置しているともいえます。これは、生物の進化上最も古くから存在す
る機能で、主に好中球(顆粒球)、マクロファージ、NK細胞などが担ってい
ます。自然免疫は、緊急事態が発生したときに、何よりも迅速な対応が求めら
れる段階で機能し、発見した異物を直ちに排除する働きをしています。



●自然目ね旗細胞の代表「好中球」
 自然免疫の中で、中心的役割を担うのが好中球です。好中球は血液の中で循
環しているものと、血管の内壁に付着しているものがあり、それらを伴せて80
~500億個が機能しているといわれています。また、血液細胞の巣ともいえる骨
髄には、さらに10~30倍の好中球が、緊急事態に備えて待機しているため、異
物の侵入の際に現場へ急行することができます。
 好中球の寿命は、1~2日です。細菌などの侵入により血管に傷がつくと、そ
の部位でインターロイキン-8と呼ばれる物質がつくり出され、好中球はこれを
指標として現場である炎症部に向かいます。細菌と出会った好中球は、細菌を
食べ、殺菌する働きをしています。これを貪食といい、数分の間で10~15個
の細菌を食べるといわれています。細菌を食べ尽くし役目を果たした好中球は、
自分自身もダメージを受け次々に死んでいきます。死んだ好中球の細胞は、マ
クロファージという別の細胞によって貪食されることで炎症が落ち着きます。



●異常な細胞を殺す「NK細胞(ナチュラルキラー細胞)」
 NK細胞は、その名の通り「生まれながらの殺し屋」と呼ばれ、自然免疫で活
躍します。主な働きは、外部からの侵入者というよりもがん細胞などの胎内で
生まれた異常細胞を殺すことです。T細部やB細胞などのリンパ球とは違い、
病原体の感染経験がなくても、異物を特定することなく(非特異性)、がん細胞
などを破壊する能力をもっています。
 全身を構成する多くの細胞は、個人を特定するためのMHCというタンパク
分子をもっています。NK細胞は、体内を監視しているときに、このMHC分子
をもっていない細胞を見つけると、異常な細胞として認識し、NK細胞内の殺傷
タンパク質を振りかけて攻撃します。



●侵入者を食べて処理する「マクロファージ」
 マクロファージは、血液中にある白血球の約5%を占める免疫細胞です。マク
ロは、「大きい」「長い」、ファージは「食べるもの」「細胞を破壊する細胞」を意
味し、このことから「貪食細胞」Tおも呼ばれています。マクロファージは、細
菌やウイルスなどの病原体、免疫細胞の残骸などを貪食します。この貪食作用
は、外部からの病原体を処理するだけでなく、壊れてしまった自分の細胞や血
小板の働きで固まった血液を食べる働きもしています。
 また、たばこの煙や食品中の有害物質など、発がん性のある物質にさらされ
ても簡単にがんにならないこともマクロファージを含む免疫細胞の働きです。
がん細胞は、細胞核に存在する遺伝子が発がん物質の影響でダメージを受ける
ことによって、通常の細胞が変異し強力な増殖能力を獲得したものですが、免
疫はこのような“細胞の失敗作”も認識することができ、マクロファージによっ
て処分されます。そのため、がん細胞が発生しても、収拾がつかないほど増
殖する前に処分できるのです。
 マクロファージは、貪食作用のほかに異物が体内に侵入したことを、そのほ
かの免疫細胞に知らせる役割も併せもっています。これを「抗原提示」といい
ます。これは、全身の免疫細胞が臨戦態勢になるきっかけを与える重要なもの
です。異物を取り込んだマクロファージは、その残骸を細胞の表面に提示しま
す。残骸を体の表面にくっつけておくことで、体内に侵入者がいることをヘル
パーT細胞などに知らせる大切な役割をしています。
 また、アメーバ状のマクロファージは、存在する場所によって姿を変え、全
身のあらゆる場所に存在していますが、同じ細胞でも分布位置によって名称や
戦う相手が異なります。例えば、脳ではグリア細胞と呼ばれ、偽足という伸縮
する足を多くもつ形をしています。肝臓ではクッパー細胞といい、門脈から肝
臓に入った異物の処理、肺の細胞マクロファージは異物を飲み込み処理します。



<獲得免疫>
 獲得免疫は、生まれつき備わっている自然免疫に対し、出生後に病原体と接
触する経験をしたとき、二度目に感染しても発病しないようにするシステムで
す。獲得免疫は、侵入した外敵と戦うだけでなく、記憶細胞という特殊な機能
をもつ細胞に変化することで、過去にどのような敵と戦ったかを記憶する役割
ももっています。
 自然免疫の実働部隊が、好中球やマクロファージであるのに対し、獲得免疫
の実働部隊は、T細胞やB細胞などのリンパ球です。



●免疫の司令塔「T細胞」
 T細胞にはいくつかの種類がありますが、主なものは「ヘルパーT細胞」「キ
ラーT細胞」「サプレッサーT細胞」の3つです。これらのT細胞が体内に侵入
してきた病原体などに対し攻撃をしてくれます。
 ヘルパーT細胞は、免疫の司令塔のような役割をしています。しかし、ヘルパ
ーT細胞自身は、体内で起きている異常をキャッチする能力をもっていません。
ここで登場するのがマクロファージです。敵と遭遇したマクロファージは、貪
食した病原体などの断片を細胞表面に提示することでその情報をヘルパーT細
胞に報告します。それを見たヘルパーT細胞は、B細胞に敵をつかまえるための
抗体をつくらせ、キラーT細胞に敵を殺す指令を下します。
 キラーT細胞は名前の通り「殺し屋」です。キラーT細胞は、ヘルパーT細胞
からの指示を受けて、能力を発揮します。この威力はとても強く、がん細胞に
も攻撃をし、殺してしまうほどです。健康な体でも、がん細胞は毎日3,000~
5,000個ほど生まれているといわれていますが、キラーT細胞やNK細胞が活躍
をしてくれているおかげで毎日がん細胞は破壊され、がんという病気の発症を
抑制しています。また、キラーT細胞とB細胞が暴走しないように見守るサブ
レッサーT細胞というものがあります。2つの細胞が、過剰な攻撃をしたり、武
器をむやみにつくらないように監視をし、免疫反応を終了へと導きます。
 このように、T細胞にはそれぞれ異なる働きの細胞があり、全身を監視するこ
とにより、私たちの体に防御されています。



●敵を記憶する「B細胞」
 B細胞の役割は、体内を循環しながら病原体などの侵入者を発見し、その侵
入者とだけ反応して敵の毒素を無毒化したり、敵の機能を破壊する物質をつく
り出したりすることです。侵入者のことを「抗原」、つくり出された物質を「抗
体」といいます。このように、適切に敵を認識してそれに対する防御が作動す
ることを「抗原抗体反応」といいます。
 抗体は、免疫グロブリンというタンパク質でできている物質で、特定の侵入
者に対抗するための専用の武器となります。B細胞は、抗体をいつまでも温存
し、もしも二度目の攻撃を受けた際には、より速やかに攻撃できるように準備
しておきます。特に、このような敵を覚えておく役割を新たに引き受けたB細
胞を「メモリーB細胞」といいます。


 このように私たちの体は、自然免疫獲得免疫の働きによって守らている
のです。

nice!(6)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。