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1.嗅覚のメカニズム (4)においを嗅ぎ分けるカギは「受容体の組み合わせ」










 嗅上皮の粘膜中に溶け込んだにおい物質は、嗅細胞から伸びた嗅線毛にある
タンパク質でできた受容体と結合し、その組み合わせによりにおいの情報が集
められます。


 人間が識別できるにおい物質は、数万種類を超えると考えられています。数
万ものにおい物質を受容体が識別するしくみについてみていきましょう。
 受容体にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる形のくぼみを持っていま
す。このくぼみににおい物質がぴったり結合すると、嗅細胞はその情報を脳に
送り、数万種のにおい物質を識別できるようになっています。それならば、そ
れぞれのにおい物質に対応する数万種の受容体が必要になるように思えますが、
人間の嗅覚受容体は約400種類しかありません。そのたった400種類ほどの受
容体で、どのように数万ものにおいを識別しているのでしょうか。
 実は、におい物質の多くは、その分子のさまざまな部分で、複数の受容体と
結合しています。そして、一つのにおい物質についての断片的な情報を脳の「嗅
覚野」に伝えているのです。受容体自体は400種類しかなくても、受容体の組
み合わせは無数にあるため、人間はにおい物質を識別している受容体の組み合
わせによって、数万種類ものにおい物資を識別しているのです。このように、
においの嗅ぎ分けは、高性能センサーである受容体からの情報を巧みに処理す
ることによって実現しています。




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1.嗅覚のメカニズム (3)においを伝える二つの道 [健康]






1.嗅覚のメカニズム (1)嗅覚を司る鼻の構造




 においの伝わり方には二通りあります。一つは、前述したように鼻からの呼
吸を介して、空気中のにおい物質を感知するルートです。
 もう一つは、食べ物や飲み物を摂取するときに、それに付随して喉の奥から
鼻に抜け、嗅上皮に達したにおい物質を感知するルートです。


 私たちは、味覚だけで食べ物のおいしさを感じていると思っている人が多い
と思いますが、実は「おいしさ」を決定づけているのはにおいだともいえます。
鼻が詰まっていると、におい物質が嗅上皮まで届かなくなり、においが認識で
きないため、おいしい料理も無機質なものに感じてしまいます。それは、人間
の持つ特殊な喉の構造が関係しています。

 人間の喉は、鼻から肺への気道と、口から食道への道が喉で交差しており、
言語の獲得とともにほかの霊長類よりも声帯の位置が下がっています。そのた
め、食べ物を飲み込むと同時に息を吸えないという特徴を持ちます。喉から鼻
に抜ける香りで感じる食べ物のおししさは、人間が嗅覚から受けている一番の
恩恵だといえます。


二つのルートを通って入ってきたにおいは、鼻腔の天井部分の嗅上皮に感知
され、嗅上皮にある嗅細胞がにおいの情報を電気信号に変えます。そして、気
信号は嗅神経を通って脳へ伝わっていきます。



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1.嗅覚のメカニズム (2)においの正体は空気中を漂う微量分子 [健康]






睡眠が大切「記憶力」



 においとは、物体や生物から周囲に発散され、嗅覚器を通じて知覚される微
量分子による特別な刺激のことです。その中で、私たちに快い感覚を与える場
合には香り、芳香、香気と呼び、不快感を与える場合には臭さ、臭気、悪臭な
どと呼んで区別しています。
 物体のにおいは、物体が表面から分子を揮発させていることにより感じます。
分子は小さいほど揮発しやすくなるため、大きすぎる分子はにおいを発してい
ません。つまり、におい物質は分子量が小さく、揮発した気体である必要があ
ります。そして、呼吸によって空気と一緒に小さな分子だけが鼻腔に入り、鼻
粘膜を刺激します。
 さらに、におい物質になるためには、鼻粘膜に達した後、鼻腔上部に位置す
る嗅上皮表面の粘膜に溶け込むために水溶性の性質であり、かつ嗅細粘膜の脂
質でできた膜を通過するために、脂溶性の性質も備えている必要があります。





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1.嗅覚のメカニズム (1)嗅覚を司る鼻の構造 [健康]







子宮の「伸縮力」 母体と胎児の変化



 私たちは外界からのさまざまな情報を、五感を使って感じています。その中
でも嗅覚は、においを感じて危険を察知したり、においを頼りに記憶を呼び起
こすばかりでなく、においによってリフレッシュしたり、集中力を高めたりと
いうように、感情にも影響を与えています。

 嗅覚に影響を与える「におい」は、日本人と古くから深い関係があります。
においは、「丹秀ひ」が語源であり、「丹」という字は、本来、赤い色を意味し、
視覚でとらえられる色彩を表していました。「いろはにほへと」や万葉集の「黄葉
のにほひは茂し」などは、美しく鮮やかな色合いの視覚的な意味を表すもので
した。

 古くから日本文化と深くかかわってきた「におい」や「嗅覚」の働きとしくみ、
それらに関連する生活上の疑問などについて学んでいきましょう。





(1)嗅覚を司る鼻の構造


 嗅覚を理解するために、まずは鼻の外部構造から確認していきましょう。鼻
の外から見える全体の部分を外鼻といいます。目と目の間を鼻根、そこから伸
びる鼻筋を鼻梁、鼻の頭の部分を鼻尖といいます。鼻尖の途中までは中に鼻骨
があり、その先の部分には軟骨があります。

 次に、鼻の内部構造をみていきましょう。鼻の2つの孔の入り口を外鼻孔と
いいます。外鼻孔から、入ってすぐの鼻毛が生えている部分を鼻前庭といいま
す。鼻の入り口から奥までの空間を鼻腔、それを隔てている真ん中の壁を鼻中隔
といいます。鼻腔の両側の壁には、外側から上鼻甲介・中鼻甲介・下鼻甲介と
いう3つの突起が張り出し、表面積を広げています。左右の鼻腔は奥でひとつ
になり咽頭につながっています。

 鼻前庭より奥は粘膜で覆われており、粘膜は外から入ってくる空気を加温・
加湿しているため、鼻腔の空気の温度は25~37度、湿度は35~80%になって
います。鼻中隔の粘膜には血管が豊富に分布しており、これをキーセルバッハ
部位といい、特にこの部分が空気の加温・加湿を担っています。

 また、粘膜表面には絨毛があり、異物が入ってくる鼻水やくしゃみなどで
異物を外に出します。鼻は呼吸を司る重要な器官であり、空気の出入り口であ
るため、空気に含まれるウイルスや花粉などの異物を排除し、肺に負担がかか
らないようにする役割を果たしています。



 そして、鼻のもう一つ重要な役割が、今回のテーマである「嗅覚」という感
覚器としての役割です。この後詳しくみていきましょう。




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2.「味わう」という能力の不思議 (4)温度と味覚 甘いものは別腹!その秘密は





3.「色・明るさ」による心理的効果 (3)「明るさ」による影響


 溶けてしまったアイスは、凍っていたときより甘く感じたり、熱いスープが
冷めたとき味が濃くなったように感じることがあります。
 これは、味細胞内で味の情報を伝えるタンパク質である酵素が、体温くらい
の温度のときにもっともよく働くためです。味細胞が食べた物によって低温や
高音の環境になると、酵素の働きが一時的に弱くなり、味を感知する働きが鈍
くなります。高温の食べ物や、低温の食べ物は、この効果を踏まえて強めに味
付けされています。そのため、時間がたって、これらの食べ物が常温になって
しまうと、味細胞の酵素の働きが強まり、味が濃くなったように感じられます。

 人間は一般的に、体温±25~35℃の食べ物を好み、おいしさを感じやすいと
されています。つまり、温かい物は60~70℃前後、冷たい物であれば0~10℃
前後でよりおいしさを感じます。

 また、温度の影響によって変化しやすい味、温度による影響を受けにくい味
があります。変化しやすいのは甘味・旨味・苦味の3種類、変化しにくいのは
塩味・酸味の2種類です。例えば、温かいみそ汁は、うま味が強く塩味もそこ
そこ感じられておいしく感じますが、冷めるとうま味の強度は低下します。と
ころが、塩味は温度に影響を受けず、ほとんど変化がないので塩味が際立って
しまい美味しさを感じにくくなります。




コラム:甘いものは別腹!その秘密は



 満腹になるまで食事をして、もうこれ以上は食べられないと思った後でも、
おいしそうなケーキやデザートが出てくると、不思議と食べることができてし
まうということがあります。これをいわゆる「甘いものは別腹」といいます。

 なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。その鍵を握るのは、脳内の視床
下部で分泌されるオレキシンという接触促進物質です。
 実際に舌で甘さを感じなくても、今までの食経験と想像から「こういう味だ
ろうな・おいしいだろうな」と想像することができます。これだけで、私たち
の脳はオレキシンを分泌することができます。

 オレキシンによって甘いものを食べたいという意欲が促進されます。オレキシ
ンが分泌されると、消化器官の働きが活発になって、胃の十二指腸に近い部分
が収縮し、胃の食道に近い部分が広がります。つまり、胃の中の食べ物を十二
指腸へ送り出し、胃の入り口の筋肉をゆるませて、食べ物が入るスペースをつ
くり出しています。これが、別腹のしくみです。



3.「色・明るさ」による心理的効果 (3)「明るさ」による影響
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2.「味わう」という能力の不思議 (4)温度と味覚の関係 [健康]







2.「味わう」という能力の不思議 (3)脳がだまされる?!味覚を変える物質の不思議



 溶けてしまったアイスは、凍っていたときより甘く感じたり、熱いスープが
冷めたとき味が濃くなったように感じることがあります。
 これは、味細胞内で味の情報を伝えるタンパク質である酵素が、体温ぐらい
の温度のときにもっともよく働くためです。味細胞が食べた物によって低温や
高音の環境になると、酵素の働きが一時的に弱くなり、味を感知する働きが鈍
くなります。高温の食べ物や、低温の食べ物は、この効果を踏まえて強めに味
付けされています。そのため、時間がたって、これらの食べ物が常温になって
しまうと、味細胞の酵素の働きが強まり、味が濃くなったように感じられます。

 人間は一般的に、体温±25~35℃の食べ物を好み、おいしさを感じやすいと
されています。つまり、温かい物は60~70℃前後、冷たい物であれば0~10℃
前後でよりおいしさを感じます。

 また、温度の影響によって変化しやすい味、温度による影響を受けにくい味
があります。変化しやすいのは甘味・旨味・苦味の3種類、変化しにくいのは
塩味・酸味の2種類です。例えば、温かいみそ汁は、うま味が強く塩味もそこ
そこ感じられておしく感じますが、冷めるとうま味の強度は低下します。と
ころが、塩味は温度に影響を受けず、ほとんど変化がないので塩味が際立って
しまい美味しさを感じにくくなります。





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2.「味わう」という能力の不思議 (3)脳がだまされる?!味覚を変える物質の不思議 [健康]




 ある物質を食べたことによる影響で、別の食べ物の本来の味が弱くなったり、
別の味に変化することがあります。このような、味覚を変える物質を「味覚修飾
物質」といいます。これは、味物質の構造を変えるのではなく、味細胞の受
容体に作用して、一時的に味覚機能を変える働きをします。このような味覚修
飾物質の不思議についてみていきましょう。



2.「味わう」という能力の不思議 (2)基本味以外の味






<酸味を甘味に変える物質:ミラクリン>
 酸っぱいはずのレモンを口に含んだらオレンジのように甘くなったり、お酢
をなめたら砂糖水のように甘くなったりするように、味覚をだます木の実があ
ります。この木の実の果肉を噛み潰し2~3分間口の中に含むと、レモンやお酢、
梅干しなどの本来酸っぱく感じるはずのものが甘い味に変わってしまいます。
このように奇跡ともいえるような働きをすることから、この木の実はミラクル
フルーツと呼ばれています。

 ミラクルフルーツが酸味を甘味に変えるメカニズムには、「ミラクリン」とい
うタンパク質が重要な働きをします。ミラクリンは酸味を甘味に変化させるの
ではなく、舌が酸味を甘味として認識させさる作用をします。

 味覚は、舌にある味蕾の味細胞によって感じ取ります。味蕾には、それぞれ
の味覚を感じる受容体があり、通常酸味は、酸味を感じる受容体に結合するの
ですが、酸味の物質(H⁺:水素イオン)が口の中でミラクリンと結合すると、
物質の形が変わり、強制的に酸味の物質を甘味受容体に結合させるようになり
ます。これにより、脳に甘いという刺激が伝達され、酸っぱい物を甘いと感じ
るといわれています。
 ただし、ミラクリンは酸味を感じる受容体を塞いだり、麻痺させるものでは
ないため、多少の酸味は感じます。また、味の感じ方を変化させているだけの
物なので、食べた物の成分が変わるわけではありません。このことから、酸っ
ぱい物を食べ過ぎると胃を悪くしたりするので気を付ける必要があります。






<甘味を抑える物質:ギムネマ酸>
 甘味をしばらく抑える健康茶として販売されているお茶に、「ギムネマ茶」と
いう物があります。これに含まれるギムネマ酸が小腸の粘膜からの糖の吸収を
妨げる働きをするため、糖分を摂取してもエネルギーにならず、血糖も上昇し
ないのでダイエットや糖尿病に有効であるといわれています。

 このギムネマ茶を30秒から1分程度口の中に含んだままにすると、そのあと
しばらくの間、甘味が全く感じられないという不思議な現象が起こります。こ
れは、ギムネマ茶に含まれるギムネマ酸が口腔内の味細胞に存在する甘味受容
体に強く結合し、糖などの甘味物質の結合を阻害することにより起こります。

ギムネマ酸は、砂糖などのさまざまな甘味は一様に阻害しますが、そのほかの
味には影響を及ぼしません。





<オレンジジュースをまずくする物質:ラウレス硫酸ナトリウム>
 歯磨きをした後にオレンジジュースを飲むとまずく感じることがあります。
これは、歯磨き粉に含まれるラウレス硫酸ナトリウムという界面活性剤の作用
によるものです。ラウレス硫酸ナトリウムは、歯磨き粉の泡立ちをよくしたり、
爽快感を感じやすくしたりするために、ほとんどの歯磨き粉に使用されていま
す。


 このラウレス硫酸ナトリウムは荷が無を増長し、甘味を感じにくくするという
特徴があります。つまり、歯磨き粉を使って磨いた後は、甘味や酸味がや
や弱まるとともに苦味が強くなるため、本来のジュースのアジト異なるまずい味
に変化してしまうのです。




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2.「味わう」という能力の不思議 (2)基本味以外の味 [健康]






 食べ物を食べたときの感覚には、5つの基本味以外にも、トウガラシやワサビ
を食べたときの辛味や、渋柿や赤ワインを飲んだときの渋味、炭酸飲料を飲ん
だ時の刺激感、コクなどがあります。味覚の定義を、「口腔粘膜に存在する味蕾
の中の味細胞が刺激され、その情報が味神経を介して脳に送られ、味覚野とい
われる場所で情報処理されて生じる感覚」とすると、辛味や渋味などは口腔内
の触覚、温覚、冷覚、痛覚などの感覚によるものとなります。これらの「味」
とはみなされていない感覚の不思議についてみていきましょう。


●辛味
 辛味は基本味とは異なり、三叉神経によって伝えられる感覚です。三叉神経
は、痛覚や温覚を伝える神経です。この三叉神経に、トウガラシに含まれるカ
プサイシンなどの辛味物質の受容体があるといわれています。この受容体は、
本来温度のセンサーとして働きますが、辛味物質とも結合します。そして、そ
の情報が脳へ伝えられ、辛味として認識されます。トウガラシの辛さは口に入
れてから、一瞬の間を置いた後感じます。これは、カプサイシンが下の表面か
ら内部に浸透し、三叉神経に到達するまでに若干時間が掛かるためです。辛味
を認識するころには、カプサイシンは下の内部に浸透しているため、口をゆす
いでも辛味が消えないのはこうした理由によるものです。

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●渋味
 渋味は、緑茶や渋柿に含まれるカテキンやタンニンなどの苦味物質が口腔の
粘膜を収縮させたときに感じる触覚の異常であるといわれています。縮められ
たような感覚を伴うことから、「収斂味」と呼ばれることもあります。渋味の
メカニズムは未だに解明されていませんが、辛味と同様に触覚に近い感覚であ
ると考えられています。



●コク
 「コクがある」と表現される食材や料理は数多くあります。生クリームやチ
ーズなどの乳製品、カレーやシチューなどの煮込み料理、牛肉やマグロのトロ
などの動物性脂肪、さらに、ワインやビール、コーヒーなどの飲み物にも「コ
ク」という表現はよく使われています。コクについての定義は不明瞭ですが、
コクを生じさせる条件として、食品の素材の熟成、発酵、加熱処理などにより
食品に含まれる多くの味物質や香り成分がつくり出され、その複雑な成分が味
蕾を中心とした口の粘膜の受容体を刺激し、それらの情報が脳に送られること
でコクウィ認識します。つまり、「味(基本味)・香り・食感」がバランスよく合
わさることでコクがあるという感覚が生まれます。





●アルコール
 日本酒やビール、ワイン、焼酎など、これらのアルコール飲料に共通して含
まれているのが、アちるアルコールという物質です。味細胞には、アルコール
だけに結合する受容体はありませんが、アルコールは基本味のうち、甘味や苦
味の受容体を刺激するといわれています。このため味の質としては、やや甘く
ほのかに苦いという感覚になります。



●メントール
 ミント味の飴やガムなどを食べると、ミントの味と共に冷たい感じを受けま
す。実はメントールそのものが冷たさを与えているわけではなく、メントール
の受容体が冷感を感知することで冷たく感じるのです。




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2.「味わう」という能力の不思議 (1)「五味」にも役割がある? [健康]




 私たちが食べ物を食べたときに感じる「おいしさ」「味」は、味蕾で感じる基
本味をはじめ、ほかにもさまざまな要素が合わさって感知されます。ここから
は、食べたときに起こる味覚の不思議についてみていきましょう。



(1)「五味」にも役割がある?

 私たちが感じる味には5つの基本的な種類があります。それは、甘味、うま
味、塩味、酸味、苦味です。これらの味は、それぞれ重要な役割を担っていま
す。






①甘味
 甘味を感じているときは、体に必要なエネルギー源を摂取しているという信
号を送っていると体は解釈します。
 体にとって重要なエネルギー源となる食べ物は、糖質です。そして、直接エ
ネルギーとなるものはブドウ糖(グルコース)であり、これが血液中に入ると
血糖となります。エネルギー源は常に体が必要としているため、体はこのよう
な物質を味わったときは、おいしいという快感を生じることによって摂取を促
進します。こうしたしくみは、もともと遺伝子情報に組み込まれているので、
生まれてすぐの赤ちゃんの口に砂糖溶液を入れることにこやかな表情とともにそ
れを摂取しようとすることも知られています。

 ただし、私たちが甘味を感じるものが、必ずしもエネルギー源になるものと
は限りません。例えば、人工甘味料として利用される「アスパルテーム」は砂
糖の約200倍の甘さを感じるといわれていますが、ほとんど消化することがで
きないため、エネルギー源になりません。






②うま味
 うま味は、主にアミノ酸であるグルタミン酸やアスパラギン酸、核酸を構成
する物質であるイノシン酸、グアニル酸、キサンチル酸などの分子を検出しま
す。これらの分子は肉や魚のタンパク質に多く含まれているため、うま味を感
じることでタンパク質を摂取しているという情報を脳へ伝えます。また、うま
味の感覚によって生命活動に必要なタンパク質と糖質を識別しているといわれ
ています。





③塩味
 塩味はナトリウムイオンを感知することで感じられます。私たちの体は一定
量のミネラルを必要とするので、食べた物の中に適度な濃度の塩分を含むかど
うかを感知しています。また、体液の塩分濃度に等しい1%前後の食べ物は、強
い快感を感じるといわれています。





④酸味
 酸味は、本来私たちにとって有害な分子を検出し、警告する役割を担う感覚
です。この酸味は、水素イオンを感知することで感じられます。食品が微生物
によって分解され、その過程で酸の分子がつくられることにより酸味が生じま
す。





⑤苦味
 苦味も酸味と同様に、私たちにとって有害な分子を検出し、体にとって毒物
であるという警告をする役割を担う感覚です。

 自然界には、植物に含まれるアルカロイド類などの苦みのあるものが多く、
猛毒として知られるストリキニーネなどがあります。苦味を感じる細胞は、そ
れらの物質に含まれる毒分子の検出を一手に引き受け、どの分子を検出したと
きも「苦い」という信号を脳へ送ります。しかし、人類は味覚によって危険な
食べ物を感知しながら、こうした経験と知識によって毒物を避けるように進化
した。その例として、コーヒーに含まれるカフェインやお茶に含まれるカテキ
ンなどのさまざまな苦味成分があります。





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1.「味覚のメカニズム」 (3)「味覚とおいしさ」を感じる脳のしくみ [健康]




 口の中に取り込まれた食べ物が、味物質やイオンの形で味蕾内に味細胞にあ
る受容体に結合すると、その情報が神経を介して脳に伝えられて、味の質や強
さの分析が行われます。また、それに連動して「おいしい」や「まずい」など
の感覚もこの時に判断されます。このような味神経を介する情報が、脳内を通
過する経路を「味覚伝導路」といいます。



<味蕾から脳への経路>
 味細胞で味物質を感知すると、そこから得た情報は、味覚神経である顔面神
経、舌咽神経、迷走神経を通って伝導されます。その後、脳幹下部にある「延髄」
の「孤束核」という部位に伝わり、塩味や甘味などの味の情報が引き継がれま
す。その後、脳幹上部にある視床を経て、大脳皮質の一次味覚野に送られ、そ
こで味の強さや質が分析されます。さらに、大脳皮質の二次味覚野で、嗅覚や
触覚からの風味や食感などの情報と組み合わされます。この情報伝達の流れに
より、私たちが食べ物を食べたときに感じる食べ物のイメージが形成されます。

 また、扁桃体、視床下部にも味覚の情報は送られます。偏桃体では、食べて
いる物が好きか嫌いか、快・不快といった「情動」の情報が判断され、視床下
部では、食欲を司るホルモンが分泌されるなどの現象が起こります。また、海
馬では、味の記憶が形成されます。

 大脳皮質まで情報伝達を行わずに、延髄の孤束核で「反射的な反応」が起こ
る場合もあります。例えば、酸っぱい物・苦い物を食べたときは、顔をしかめ
る顔面表情変化、唾液や消化液の分泌などの現象がこの段階で起きたりします。

 つまり、味の基本的な選別と反射的な反応は、延髄を含む脳幹部分で生じる
ため、たとえ大脳に障害があったとしても起こるということが分かります。




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